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月の光 32

 城外開拓区警察署の斎藤と、中西が、列車ハウスを何度か尋ねたが、事態は相変わらず進展しなかった。

 「このままずっと、清人って子には会えないままですかねえ。それはまずいですよね。」

 中西が、困り果てた様子で、ぼやく。

 「ああ、さすがの大和署長もいい加減苛立ってきている。首都圏警察本部の橋本って奴からせっつかれているらしい。」

 「どうします。何か良い打開策はありますか?」

 「いよいよ、切り札を使うしかないな。」

 「何ですか、それ。そんなのが、あるんですか?」

 「ああ、吾妻清人はもう18才だろう。どんなに、ひきこもっていたとしても、男性としての成長はしているだろう。色仕掛けだよ。」

 「えっ、色仕掛け?て、誰を使うんです?」

 斎藤の意外な言葉に、中西も興味を持った。

 「決まってるだろう。里美だよ。あいつしかいないだろう。」

 斎藤は、当然だと言わんばかりに里美の名前を挙げたのだが、中西はがっかりした。一瞬期待を持っただけに、その反動が大きい。

 「いや、斎藤さん、いくら何でも、それは。柳田里美ですよねえ。色仕掛けになりますかあ?」

 「大丈夫。吾妻清人は、何しろ、人間の女性を知らないのだから。あの、モナの恰好を見てみろ。あれが、清人の好みなんだよ。だけど、小さい頃から、あれしか見ていないから、感覚がマヒしているに違いない。

 里美には、逆に知性的なメガネ美人の格好をさせれば、興味を持って、ベッドから飛び出してくるはずだ。」

「そんなにうまく行きますかね。」

 中西は半信半疑だった。どう見ても。モナの方が魅力的に思えた。子供のころから、モナを見慣れているとすれば、例え贔屓目に見たとしても、里美では役不足に思えたのだ。


 3人は、列車ハウスの門の前で、挨拶をした。斎藤と、中西は、いつもの通りの、少しくたびれたジャケットに折り目のはっきりしないズボンといった出で立ち。

 柳田里美は肩まである髪を、後ろでひとまとめにし、制服制帽を身に着け、メガネをかけている。少しでも、知性的に見せるつもりが、かえって、どんくさく見えてしまう。だが、生真面目な誠実さはうかがえた。

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