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月の光 33

 「初めまして、柳田里美です。私は、城外開拓区警察署の一署員に過ぎないのですが、ここで何が起きたのかを調べるために、ご家族の記録を調べさせて頂きました。吾妻春清さんの論文も読みました。

 そして、不思議なことに気が付いたのです。清人さんは、バビロンで4歳まで育ったと聞いています。ところが、日本に帰国されてから、保育所で起きた事件の為に、精神に障害あると一方的に判断されて、現在は福祉のお世話になっているとお聞きしました。

 その事件についてなのですが、子供たちが、頭に鋭い傷を受けて、それが清人さんによるものだと、されたのですが、でもそれを見た保育士はいなかった。そして、清人さんはその時、エンマリシューと叫んだ。記録ではそうなっていました。

 それで、これは私の想像なのですがエンマリシューとは、バビロニア神話のエヌマエリシュの事ではないのか?もしそうだとすれば、エヌマエリシュの意味は、バビロニア語で『その上に』という意味でした。

 その時、子供たちの上に何かがいたのではないのか、清人さんはその危険を知らせようとしていたのではないのか?そう思えたのです。

 それから、これは、最近ここで起きた、騒ぎの事です。蜂のような虫が空から飛んできて、デモ隊の人々を襲ったと言われています。人々は、頭に、鋭い傷を負ったと言います。

 ひょっとすると、これは清人さんが保育所で見たものではないのか、そんな疑問が浮かんだのです。

 だとすると、清人さんは、精神に障害があるわけでも、人々に危険をもたらしたわけでもなく、むしろほかの子供たちに危険を知らせようとした、にも拘わらず一方的に排除されたのではないか、そんな風に思えたのです。」
 
 里美は真剣に訴えた、マザーもモナも黙って聞いていた。清人も、ベッドの中で耳をそばだてていた。

 里美の話はまだ続いた。

 「私は、清人さんと話がしたいのです。いえ、清人さんの話を聞きたいと思っているのです。本当は、言いたいことがあったのに、誰も聞いてくれなかった、もしそうなら、私が聞いてみたいと思っています。」 

 モナがベッドの中にいる清人の方を、ちらっと見るが、まだ清人は出てこない。
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