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ロクサーヌ (その39)

 私kは、錦糸町と亀戸の境にある川のそばの古い木造のアパートを借りた。少し離れたところに借りた駐車場の料金は、アパート代よりも高かった。アパートの薄汚れた階段を昇り2階に上がると、すぐ右手に共同トイレがある。私の部屋は左手斜め向かいの、風呂もシャワーもない6畳一間である。木枠の窓があり、閉めても隙間ができる。無職の私が借りることができたのは、ここがあまりに古すぎて借り手がつかない為だった。私は階段と廊下とトイレの掃除をした。自分が住むところなので、少しはきれいに整えたいと思ったからだ。部屋にパイプベッドと、籐でできた椅子と丸い硝子テーブルのセット、そしてライティングデスクを置いたらもう部屋は一杯になった。電話もテレビもパソコンもないので、外の情報は何もない。昔読んだ本をただ読み返すだけだった。
 その年の夏はとても暑かった。エアコンも扇風機もないので、あまりの暑さに耐えきれずイラついた私は北海道へ行こうと思い立ち車に乗った。8時間ほど休憩も取らずに東北道を走り、青森についたときはもう夜だった。それから、フェリーに乗るために野辺地を目指した。途中夏泊まで来てもう深夜になっていた。疲れたので休もうと思い、駐車場らしきもののある林の中に車を止めた。そこが、どこだったのかもわからないまま私は車の中で眠った。
 翌日、眩しい朝日を浴びて、私は目が覚めた。目の前を見ると、夏泊半島の海が広がっていた。私は嬉しくなり、岩場だらけの海に入った。7月の末だったのだが、海の水はとても冷たく、この時期に海に入る人はいなかった。もう一度車に戻り、あたりを見渡すとバンガローのようなものが幾つもある。多分、国民休暇村とかそのような施設だったのだろう。レストランらしきものを見つけて、中に入り、カレーとアイスコーヒーを頼んだ。食べ終えて、料金を払おうとすると「入りませんよ。」と言われた。不思議に思い理由を尋ねたのだが、ただ「いいんですよ。」と言われるだけだった。
 後で思ったのだが、私はたぶん自殺志願者と思われたのだろう。私には、自殺願望は全くなかったのだが、その無謀な行動は、人から見ればそのように思われても仕方がない。自分では気づいていなかったが、破滅願望はあったのだと思う。私は、お礼を言って店を出た。
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