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 ロクサーヌ (その42)

 私は、グルグルした頭を抱えたまま何も言葉が出ず、歩いていた。多分みんなも同じだったのだろう。そう思っていたら、突然に私は走り出した。体が勝手に動いてどんどん走り出す。皆も続いて、私たちは7人で大阪の通りを走り抜け、走って走って止まらない。そのうち、ご主人様がついに脱落した。翔と喜娘が、戻ってご主人様に付き添った。私と、ミトラとバルナとナースティヤの4人はどこまでも走り続けた。そして、奈良の生駒山を走りすぎたところで、見渡す限りのとうもろこし畑が広がって、4人でその中へ飛び込んだ。
 ひっくり返って空を見上げ、その空ともう一つ向こうの空とを睨みつけた。ひっくり返ったまま、ただ息だけをして、ゆっくり流れる白い雲をじっと見ていた。どのくらい時間がたったのか、いつの間にか頭は空っぽになっていた。翔と喜娘とご主人様がやってきた。翔が近くの村人から聞いた話では、ずっと、ずうっと東の大きな山を越えたところに、もう一つの日本があると云う。お坊さんから聞いていた話では、日本の中心は奈良だったが、それとは別の日本があると云う。こちらの日本は海の国だが、向こう側の日本は山の国だと云う。その夜私たちは、村人の家に泊めてもらった。
 村人が言うには、日本は真ん中に大きな山脈がいくつもあり、東と西に分かれていて、昔から交流も少なく言葉も風習も違っているのだという。その中でも一番大きな山が富士山で神様の山なのだという。そこを超えるのは大変困難で、越えた先がもう一つの日本になるのだという。
 翌朝、元気になった私たちは、その山を越えてみようと村人の家を出発した。
列車に乗って、左手に山々を見て右手には海が続いていた。単調な列車の旅ではあったが、お陰で休むことができた。
 明け方4時ごろに清水の港で列車は止まり、荷物を積みかえていた。その時に、列車を降りて外を歩いてみた。すると、目の前に真っ黒い巨大な山が見えた。その山は、海の中から屹立し視界というスクリーンの画面いっぱいに大きく広がり、上を見ても、右を見ても、左を見ても全部が山で一度に見切ることはできないほどだった。山の下の方から少し白地んだ空は、上に行くに連れ濃いインク色のグラデーションになり、星がまだ瞬いていた。
このような山は初めて見たと思った。
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