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月の光 77

 橋本が、まだ乾の考えをよく理解できないうちに、乾は新しい提案をした。

 「この2人の皮膚の細胞を少し、取りましょう。」

 「それは何の為ですか?」

 「蜂に刺された部分が、現在は見かけ上変化していません。しかし、その部分に、継続して光が当てられている、または光を受信している、とすれば細胞の構成事態に変化があるのかも知れません。」

 「では、細胞の分子レベルで詳しく検査すると言うことですか?」

 「そうですね、もっと精密に、ひょっとすると電子の異動レベルで調べることが必要なのかも知れません。」

 「電子レベルですか、分かりました。光の受信状態そのものを観察したいのですね。」

 橋本も、少し乾の考えが分かったような気がした。

 『乾は、この細胞が見た目には変化していないが、非常に細かな電子のレベルで変化していて、受信器としての役割を担っていると、考えているのだな。』


 乾と橋本が、このように話し合っている間、斉藤と中西はまだベットの上に横たわっていた。

 そして、ようやく意識が目覚めてくると、看護士の女性が「気が付きましたか。ではこれを飲んで下さい。」と言い、2人はコップを渡された。

 中はただの水のようだった。「これも何かの薬ですか?」中西が尋ねると「いいえ、疲労回復のためのドリンクです。」と看護士が答えた。

 「もう終わりですか?」斎藤は少し大きな声で乾に向かって聞こえるように尋ねた。

 「ええ、今日の所は終了です。もう帰って頂いて結構です。」

 「今日の所はって、また来るのですか?」斎藤は、乾の横柄な言い方が気に入らない。

 『もう少し言いようがあるのではないか。何の説明もなく、終わったから帰ってください、みたいな感じは、どうなのだ。お礼の一つもあって良いのではないか。』などと腹の内では思うのだが、やはり口には出せないでいた。

 「必要な時には、また連絡しますので、今日はお引き取りください。」乾は、全く無頓着だった。

 『なんだ、お引き取りくださいって、まるでクレーマー扱いじゃないか。』そう思いながらも、「分かりました。それでは、失礼します。」と大人しく挨拶をして部屋を出た。

 
 地下の駐車場で車に乗り込むと、早速中西が愚痴をこぼした。「何ですか、あいつらは。こっちは夜遅くに残業までして来てやったのに。最後はお引き取りください、って馬鹿にするにも程がありますよ。」

 「そうだな、全くだ。しかもあの検査が何だったのか、一言の説明もなしだ。これは、さすがに大和署長にも報告しない訳にはいかないな。」

 2人は、悔しい思いを一旦腹に収めて、また高速道路に向かった。
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