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月の光 83

 中西に助けを求められて、モナが説明し始めた。

 「斎藤さん、今私たちがいるのは、斎藤さんの記憶の中なんです。」

 モナの説明によれば、それは蜂に刺された部分にホタルの光を浴びた為だろうと言う。ホタルの光のエネルギーが脳の記憶部分を刺激し、古い記憶が活性化している。逆に新しい記憶は壊れてきているという。

 中西の場合には、それが若い頃に夢中になったアニメやゲームの記憶が活性化し、本人の意識はその世界に入り込み、閉じ込められた状態になった。

 「つまり、中西さんは夢遊病や白昼夢、妄想の状態になって、現実には起きていない宇宙船の攻撃を現実だと錯覚していたのです。

 斎藤さんは、高校生の頃に戻って、その頃の記憶を懐かしみ、追想しているのです。でも、それが現実の世界だと錯覚してしまい、今は新幹線つばさに乗っていると思い込んでいるのですよ。」

 「じゃあ、何か、今俺は夢の中にいて、そこでお前たちと会っている、というのか?」

 斎藤は、中西の説明では納得できなかったが、モナの言う事であれば、真実かもしれないと思った。

 「そうなのです。ですから、これから私の言う通りにしてください。そうすれば、この記憶の中の世界から脱出できます。」モナは、そう言って斎藤の両手を握りしめた。

 斎藤は黙って、モナの両手を握り返した。しばらく、モナの目を見ていると、だんだん頭がハッキリしてきたようだ。

 「うん、何か頭が冴えてきたな。ああ、何か思い出してきた。そうだ、ホタルの大群を見てから、頭がすごく冴えてきて、それから家に帰って、酒を一杯飲んですぐ眠ってしまった。

 じゃあ、あれからずっと俺は眠ったままなのか?」

 「ええ、そうですよ。今も、眠ったままなのです。」

 「そうなのか、じゃあこれが蜂やホタルの所為でこうなっているというのだな。でも、何のためにこんなことをしているのだ?」 

 モナの話を信じたとしても、斎藤には、やはり意味不明だった。このことが蜂にとってどんなメリットがあると言うのか。

 「正確には、分かりませんけど、結果を見れば、人の記憶を混乱させているのかも知れません。それも、新しい記憶から消して行っているのかも知れません。でも、その目的は私には分かりませんけど。」

 「ふーん、記憶を混乱させ、新しい記憶を消しているのか。それじゃあ、みんな馬鹿になっちまうってことだな。ひょっとして、巨人の文明が滅んだのは、そのせいなのか?

 それが目的なのか?だとしたら、何だか面倒くさいことをするんだな。」
 
 「でも、そのおかげで、脳が活性化した部分もあります。中西さんは、こうやって人の記憶の中に入り込むことができるようになったんです。」

 「それはどうやっているんだ?モナちゃんも、同じことができるんだろう?」

 「これは、言葉を使わずに、直接的に脳の電気信号につながっているんです。脳と脳が直接コミュニケーションをとっているって言う感じです。」

 「そうなのか、ふーむ。・・・よし分かった。理屈は分からんが、モナちゃんを信じるよ。」

 「では、次の駅でこの電車を降りますよ。そうしたら家に帰れます。」

 「ああ、それ何だが、悪いが俺はまだこの旅を続けたいんだよ。行きたいところがあるんだよ。」

 斎藤は、まだ旅を続けると言う。理由が分からず、中西とモナは困惑した。
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