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月の光 90

 「斎藤さんは、どう思っていますか?」大沢美穂が斎藤に尋ねた。

 「えーっと、まあ、俺はだな、そんな難しいことは分からんが、昔の故郷に帰ってみて、感じたのだが、静かで良かったな、と思った。

 首都圏に来て、ずっと働いていて思ったのだが、どうも忙しい。というか、忙しくさせられるんだよな。本当は、人口も減っているのだし、そんなに忙しくないはずだ。

 それなのに、無理に人を集めて、忙しくさせようとしている。効率的だとか、経済的だとか理由はあるのだろうけど、どうも現実的ではない気がするのだ。

 済まないが、今はこれ以上うまく言えないな。」

 斎藤は思っている事がうまく説明できず、もどかしかった。

「斎藤さんが言おうとしている事は分かりますよ。人口は2020年が12340万人で、現在は8500万人で、30%以上、約4000万人減っています。しかも、その内半数の4000万人が60歳以上です。

 これだけ、老化している社会なのに、今でも過去の資本主義や社会主義を超える社会を見つけられないでいます。相変わらず、民主的社会主義や福祉国家を目指すと言っています。

 誰が誰を助けるのか、老人ばかりなのですから、福祉国家など無理なのです。働ける人や世話する人の方が圧倒的に少ないのですから。

 効率よく働くと言っても、効率よく動けるのは若いうちだけです。老人ばかりですから、効率よく動く事ができないのです。必然的に非効率な社会になっていますね。」

 大沢美穂は、斉藤の言わんとするところが、老人社会になった日本の現状に、社会の仕組みが変らないため不都合が起きているのだろうと理解した。

 「里美さんは、どうですか?」

 「私は、まだよくわかりません。でも、日本はまだ良いのかなと、思っています。というのは、例えば中国や、ヨーロッパのような監視社会にはなっていないところです。

 全てを、国家や、政府や公共の機関が計画して、生産し流通も管理して、生活費も支給する、というのは効率的かも知れませんが、その仕組みから外れた者は生存できません。

 自由がない、というのはやっぱり苦しいです。生活は貧しくなったのかも知れませんが、自由がある方が良いと思っています。」

 「そうですね、私もそう思います。2020年代以降、世界は自由を求める勢力と、国家による福祉的平等を求める勢力に別れました。

 福祉的平等主義は、自由主義者によって社会主義と呼ばれ、自由主義を主張する者は、福祉的平等主義者によってファシスト全体主義と呼ばれました。

 つまり、互いに相手を全体主義者だと言って非難したのです。今は、殆どの国家が、福祉的平等を目指す監視国家になっています。自由主義者は、相変わらずファシストと呼ばれています。

 未だに、資本主義や社会主義を超える、新しい社会が実現できていないと言うことです。」

 大沢美穂は、自由主義者だった。
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