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月の光 94

 橋本は、問い詰められると、観念したように検査の説明を始めた。

 「お2人の、頭皮の細胞を観察したのです。その結果、光を受信している形跡が見られました。しかし、特に異常はなかったので、乾さんも詳しい説明は省いたのだと思いますよ。」

 「それだけなのか、本当にそれ以外の検査は何もなかったのか?」

 「ええ、他には何もありませんよ。」橋本は、頭皮の細胞を削り取ったことは話さなかった。

 「じゃあ、聞くがあの麻酔は何の為だったんだ。何か、手術をしたんじゃないのか?」

 「あれは、ただの鎮静剤ですよ。神経の興奮を鎮めるためです。興奮した状態では、正確な検査ができませんから。」橋本は、もっともらしく説明したつもりだったが、斎藤には通用しなかった。

 「ふーん、あくまでもしらを切ろうって魂胆だな。」そう言うと、斎藤は橋本の右腕を強くつかんだ。同時に、中西が左腕を強くつかみ、椅子に座っていた橋本は、2人に両腕を押さえ込まれ、身動きできなくなった。

 「おい、俺の眼をよく見て、もう一度あの日の事をよく思い出すんだ。」そう言いながら、斎藤が橋本の眼を覗き込むようにして、顔を近づけた。
 
 橋本は、斎藤に強く言われるまま、その日の検査の時の様子を頭に思い浮かべた。口には出さなかったが、あの日の事は鮮明に思い出された。



 『なんだ、ちゃんと覚えているじゃないか。これが橋本の記憶に残ったあの検査の様子だな。俺達2人ともベッドに寝かされているな。』

 斎藤と中西は、橋本の記憶に潜入することに成功した。

 『あれですね、CT検査みたいなやつですね。確かにやりましたね。あの後ですよ、麻酔注射されたの。』

 暫くすると、頭皮の細胞を削り取る場面が出てきた。

 『斎藤さん、あいつ等とんでもないことやってますよ。頭の皮を削っちゃってますよ。』中西が興奮気味に話す。斎藤も、怒りを抑えていた。『ああ、確かに、とんでもないことをやっているな。』

 更に、その細胞はシャーレに保存された。

 『ちょっと先を急ぎましょう、この後、ホタルが来るはずですよ。』中西が、そういうと橋本の、海馬の中を泳ぐように進んだが、ホタルは来なかった。
 
 『駄目だな、ホタルが来る前に、橋本は航空宇宙センターを出てしまったんだな。』

 『そうですね、すると1週間後ですか。次に橋本が航空宇宙センターを訪れたのは。』

 中西は、悔しそうに、顔をしかめた。

 その時、黒い影が、海馬の中を移動した。

 『なんだ、今のは?何か、黒い影が見えた気がしたが。』斎藤が、気になって、中西に問いかけたが『いえ、気が付きませんでしたけど。でもまあ、記憶の中ですからね、色々知らないものもあるんじゃないですか。』と、中西は気にしていなかった。

 『それよりも、1週間後にどうやったら移動できるのか、それが分かりません。』

 『そうだな、一旦引き上げよう。細胞を削ったところは確認したからな。』

 まだ、獲得した能力をうまく使いこなすことができず、一旦引き上げることにした。

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