fc2ブログ

月の光 95

 「橋本さん、アンタ大変なことをしてくれたな。」

 斎藤に、急にそう言われて、橋本は何のことかわからなかった。と言うよりも、一瞬気を失っていたような気がして、自分が今、何処にいるのかすら分からなかった。

 暫くの間、橋本は無言で、ただ事態を把握しようとしていたが、漸く自分が何をしていたのかを思い出した。

 「斎藤さん、私に何をしたのだ。どうも頭がぼんやりしている。何か変な薬でも使ったのですか?」

 「何を言ってるんだ、それはこっちのセリフだよ。アンタが俺達に麻酔注射をした後、頭の皮膚を削り取った事は、もうわかっているんだ。たった今、あんたの口から聞き出したんだよ。」

 斎藤は、高飛車に橋本を責め立て、橋本も、それを否定することができなかった。

 『しかし、どうやってそれを聞き出した?何かがおかしい、途中の記憶が失われたような感じだ。』

 橋本は、事実を突き立てられても、まだ、自分でその事を白状したとは信じられずにいたのだが、今それを話してもどうにかなる状況ではなかった。

 「そのことを知ったとして、だからどうだというんだ。」

 「開き直るつもりか。」

 「いや、黙っていたのは、済まないと思っている。その事については謝罪する、申し訳なかった。しかし、これは全て乾さんの指示なのだ。私は、指示に従っただけなのだ。

 それに、あなた達も、特段に実害があったと言う訳ではないだろう。この事は、もうこれで終わりにしよう。」

 「オイオイ、これで終わりって、随分安く見られたものだな。こっちは、勝手に自分の身体を削られたんだぞ。どんな手術でも、同意書ってものがいるだろう。言ってみれば、同意もなく人体実験された様なものなのだよ。」

 下手に出て、事を穏便に収拾しようと考えた橋本も、これにはカチンときた。

 「人体実験とは言いすぎだろう。そんな内容では無かったはずだ。そこまで事を荒立てるつもりならば、私にも考えがある。」

 「まあ、それは言い過ぎだったかも知れないな。だが、少なくとも、俺達には自分の身体がどうなったか知る権利はあるはずだ。

 シャーレに保管した、俺たちの細胞がどうなっているのか、ちゃんとこの目で確かめたいのだ。航空宇宙センターの乾さんと段取りをつけてくれ。」

 『あんまり、責めすぎると、元も子もなくなるからな、とにかくあの後、ホタルが来てどうなったのか、それを確認するのが目的だ。危なく忘れる処だった。』

 流石に人体実験は言い過ぎたか、と斎藤も調子に乗りすぎた、と言った後から反省した。
関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

gasset

Author:gasset
FC2ブログへようこそ!
歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR