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月の光 98

  城外開拓区警察署で、中西が航空宇宙センターでの失敗談を里美に話していた。
 
 「いやあ、完全に失敗しちゃったよ。」中西が、悔しそうに声を上げた。
 
 「そうなんですか、やっぱりまだ新しい能力を使いこなせないからですか?」

 里美は、自分にはない能力なので、良くは分からないが、それでも羨ましいと思った。

 「それだけとは思えないのだよ。原因は分からないけど、まるで、自分たちが取り込まれたような感じがしたのだ。何か航空宇宙センターでおかしな事が起きている気がする。」

 「そういえば、航空宇宙センターでは最近、職員が退職しているそうなんです。」

 「退職?この時代に、退職何てしてどうするのだ?政府の仕事を断っていたら、他に仕事何てないだろうに。」
 
 「はい、そうなんですよね。それで、退職した職員の補充として、派遣職員が来ているのですけど。それが、飛鳥研究所から派遣されているというのです。」

 「飛鳥研究所?あの吾妻教授がいたところか?」飛鳥研究所と聞いて、斎藤が話に割り込んできた。

 「はい、そうです。飛鳥研究所は、政府から人材派遣の委託の仕事を請けているそうなのです。」

 「何で、前からそうだったのか?」

 「いいえ、人材派遣の仕事は、最近です。航空宇宙センターへの派遣が初めてみたいです。」

 「まあ、乾は元々飛鳥研究所には馴染みがあるから、その関係なのかも知れんが。そう言えば、確かにあの検査室で見た白衣の医務官たちは、妙に不自然だったが。派遣職員だったのかな。」

 斎藤は、あの医務官たちの人形のような不自然な動きを思い出していた。

 そんな話をしていると、館内放送が流れてきて、大和署長から、組織変更の発表があった。

 「政府からの、発表で、近々に警察組織、及び行政組織の変更が予定される。首都圏警察は今まで、南関東東部の下総、上総房総、を管轄していたが、これらは坂東地方警察に移管される。首都圏から、旧千葉県に相当する地方が外れた事になる。

 これまで、東日本の行政組織は、北海道管区、陸奥地方管区、出羽地方管区、坂東地方管区、首都圏管区の5つの地方管区に別れていたが、名称の変更はない。

 しかし、今後も、首都圏の縮小が続くとみられる。職員の所属も、首都圏から移管されることになるが、それに伴って、異動を拒否する場合は、身分保障ができず、退職扱いになるとのことだ。以上。」

 
 中西の顔が、歪んだ。「げっ、何だよ、この先身分保障がなくなるって。やばいですよ。」

 斎藤は、もうすぐ定年退職なので、余裕があった。「まあ、そう慌てるな。この城外開拓区警察署は変わらないのだから。それに、万一移管になったら、そのままくっ付いて、異動すればいいだけだ。」

 「斎藤さんは、定年だから余裕ですけど、今時首都圏を外れたら、その後どんな山奥に飛ばされるかわかりませんよ。」と、中西は不満げだった。

 実際この時代は、人口がどんどん減少する一方で、殊に地方では生活圏が保証されない。商業地は、50km毎に一つというのが標準とされていた。

 「しかし、どうやら職員の退職は航空宇宙センターだけではない、と言うことになりそうだな。ひょっとすると、警察官も派遣職員になるのか?」斎藤も、ぼんやりと先行きに不安を感じた。

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