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月の光 99

 列車ハウスで、斎藤はモニター越しに大沢美穂に航空宇宙センターでの一連の出来事を説明していた。

 「そうすると、乾さんは、ホタルの姿は見えなかったというのですね。」

 「そうなのだよ、俺と中西で確かめたが、分からなかった。」

 「そうですか。でも、それと関係があるのか分かりませんが、近頃、航空宇宙センターでの職員と入れ替わりがあったそうですね。」

 「もう知っているのか。そうなのだ、里美が調べたところによると、前からいた正規の職員が退職して、入れ替わりに派遣職員が来ているそうだ。しかも、それは飛鳥研究所からの派遣だというのだ。」

 「恐らくこれは、統制経済に進んでいるのです。中産階級を減らし、労働者階級を増やす。そうすれば、社会全体が少数の支配階級と多数の労働者階級に別れてゆきます。

 中産階級がいなくなって労働者階級が増えることこそ、福祉的平等主義という統制経済にとっては理想なのです。」

 「では、これは自由主義ではなくて、福祉的平等主義の進展だというのか?」

 「そうですね、ヨーロッパが歩んだ道と同じです。あらゆる労働を時間で測り、その給与を同一にすれば、社会全体が窮乏化します。窮乏化した社会での平等を目指しているのです。」

 「それが、でも乾の航空宇宙センターでの出来事につながるのか?」

 「恐らく、人類改良計画が発動されたのでしょう。多分、乾さんはホタルの指令を受けてしまっているのでしょう。斎藤さん、航空宇宙センターに行ってからの出来事を、もっと詳しく話してもらえますか。」

 「そうか、しかし、話すにしても。これはモニター越しでは伝えにくいのだが。実は、俺と中西は航空宇宙センターに行って以来、奇妙な体験をしたのだ・・・。」

 斎藤は、最初に航空宇宙センターに行った後、記憶の中に入った一連の出来事を説明した。

 「では、その記憶の中に入るという能力が、乾さんには通用しなかったわけですね。」

 大沢美穂は、記憶の中の出来事についても、驚く様子はなかった。

 「そうなのだ、むしろ俺たちの方が、乾の記憶の中に閉じ込められそうになったよ。」

 斎藤は、その時の状態を思い出し不安だった。

 「そうですか。だとすれば、乾さんも、斎藤さんと同じように、ホタルの光を浴びて、脳の状態に変化が起きたのかも知れません。

 斎藤さん達は、モナさんによって助けられましたけど、乾さんは完全にホタルの支配下にあるのでしょうね。」

 「もし、美穂さんの言うように、これがホタルの仕業だとして、これから、俺たちはどうしたらいいのだ?」

 斎藤には、まだ大沢美穂の考えが分からなかった。大沢美穂の説明では、まるで社会全体が変わっていくようなのだが、そんなことを乾が一人で出来るとは到底思えなかった。
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