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月の光 100

  乾は、飛鳥研究所の高岳所長を訪ねていた。

  「高岳所長、この度は人材派遣についてご協力いただき感謝します。」

  「いや、私の方こそ、おかげで政府からの予算が配分されて、助かっているよ。実際、吾妻教授の件があってから、研究費の予算もどうなることかと心配していたのだ。

  しかし、どうやって蜂の一件を片付けたのだ?あれ以来、私達の研究が白い目で見られていたのに、急に予算が付くようになって驚いているのだよ。」

  「あれは、蜂とホタルのサンプルを研究した結果、あの光が人間に有用だと判明したのですよ。」

  「光が、有用とは、具体的にどんな効用があるのだ?」

  「あの光を照射することで、人間の攻撃性が抑えられました。そして、同時に社会性、つまり協調性や、組織に対する帰属感、それに対する精神的な幸福感などのホルモンが増加することが分かったのです。

  逆に言えば、反社会的な行動や、個人主義的な言動が抑制されるため、結果として社会秩序の維持、安全性、安定性などの増進に寄与できるのです。」

  「それらが、ホルモンの作用によると言うのか?」

  「正確には、あの光が大脳皮質に影響を及ぼし、不必要な記憶や、感情が削除されるのです。その結果、不安や不快な感情を刺激するホルモンの分泌が抑制されることが分かったのです。」

  「それらの研究を、これからも続けると言うのかね。」

  「はい、そうなりますね。この光を、ホタルに頼らず、人工的に開発できれば、今まで、不安を抱えていた人も、その不安から解放されます。また、社会に関わることに、問題があった人も、解決されることでしょう。

  その開発の為にも、こちらから派遣していただく人材が必要なのです。」

  「だが、彼らが、その開発研究に必要なスキルを必ずしも持っていなくても本当に大丈夫なのか?」

  「ええ、ホタルの光を照射することで、彼らの今まで使われていなかった脳も活性化しています。同時に、組織に貢献できることで、幸福感も増しています。」

  「そうか、それならよかった。今後も、そのような人材を提供できるように協力するつもりだ。予算さえあれば、幾らでも人材は集められるからね。」

 高岳所長は実際には、乾の航空宇宙センターで何が行われているのか知らなかったが、飛鳥研究所に対する、政府からの予算が配分されることで満足していた。

 「ところで、今日尋ねたのは、高岳所長に別のお願いがあって伺ったのです。」

 乾は、新しい計画を高岳に説明した。その計画とは、坂東地方管区において、実験的に新しい自治国家を創るというものだった。

 「それは、しかし政府の許可が必要なのではないのか?」

 「はい、既に科学捜査班の橋本が首都警察から、坂東地方警察に移動になりました。彼も、今回の蜂の一件での捜査が評価されて、本部長に抜擢されましたので政府の意向は問題ないと思います。」

 「では、その自治国家は、坂東地方警察が中心になると言うのか?」

 「そうです。警察力を確保していれば、治安の面での心配はありませんから。万一に備えての事です。」

 高岳所長にも、その計画をどこまで信用してよいのか、まだ不安があった。

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