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月の光 101

 斎藤は、60歳を迎え定年になり、城外開拓区警察署を退職した。その日は、列車ハウスで退職祝いが行われた。

 「斎藤さん、無事定年退職おめでとうございます!ある意味羨ましいです。」中西は、これからの自分を思うと、本当に斎藤が羨ましかった。

 「なぁに、中西だって、我慢すればその内定年退職できるさ。」斎藤は、そういうのだが、

 「でも、斎藤さんの代わりに来る人、山鹿さんでしたっけ、ちょっと気難しそうですよね。うまくやっていけるか不安ですよ。」

 山鹿というのは、斎藤の後任として、生活安全課に配属された50代の警察官であるが、口うるさく生真面目な性格な為、若い警察官からは敬遠されていた。

 「だがな、生真面目というのは、警察官としては良い資質だろう。まあ、俺とは違うが、見習う点はあると思うよ。黙って、付いていけば間違いはない奴だろう。」

 「そうですね、生き残るためには、問題を起こしそうな変な人が来るよりはましですね。辛抱しますよ。」

 「それで、斎藤さんは退職後はどうされるのですか?何か、予定はあるのですか。」里美が尋ねた。

 「いや、今はまだ白紙だ。取あえずは、のんびりするさ。帰る田舎もないしな。」

 「えっ、山形は故郷じゃないのですか?」

 「故郷と言っても、両親もいないし、探せば親戚はいるだろうが、長年連絡も取っていないからな。今更、帰る場所ではないさ。」

 「それじゃあ、暫くは、この城外開拓区で暇にしてるって事ですね。」清人が、珍しく自分から話に入ってきた。

 「ああ、そのつもりだよ。」

 「あの、乾さんの件はどうしますか?あれはこのまま放って置くのですか?」

 「うん、まあ中途半端になってしまったが、でもいずれはまた調べるつもりだよ。せっかくの能力が無駄になっちまうからな。」

 「そうですか、でしたらもし良かったら、僕もお手伝いさせてください。」清人が、自分から手伝いを申し出たのは、斎藤には意外だった。

 「清人君が?でも、今まで、何か人と関わったことないのだろう?大丈夫なのか?」

 清人にはある考えがあった。皆が、何かしらの活動をしてるのを見て、自分も参加したいと思っていたのだ。

 「僕も、皆さんの活躍を見て、自分にも何かできるのじゃないかと思っていたのです。でも、やっぱり一人では何をどうしたら良いのかわからなくて。

 でも、斎藤さんが、警察を辞めても、その事に関わるのなら、僕にも手伝わせて欲しいのです。邪魔になるだけかも知れませんが。」

「まあ、それは構わないが・・・。うむ、まあ・・・ちょっと考えさせてくれ。」

 斎藤は、ちょっと困ってしまった。清人に積極性が出てきたのは、良いのだが、これから斎藤がやろうと考えていることは、特殊な能力が必要で、普通の人にも難しい事である。

 それを、警察官の経験もない、まして社会人としての経験すらない清人に、できるのか。まず共同作業というものから教えねばならない。そう考えると、気が遠くなりそうなのだった。
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