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月の光 103

 斎藤が退職して、半年がたった。清人は徐々に、体力をつけ農作業も、最近ではモナの立てた、一日の作業計画を予定通り達成できるようになった。

 「清人君、もうそろそろ運動できる体力は付いたようだな。」斎藤は、清人の体つきを見て、大分筋肉がついてきた様子に安心した。

 「はい、もう大丈夫ですよ。鍬入れや、鎌で雑草を刈ったり、何でもできますよ。」清人は、随分と自信がついたようで、声も大きくなり快活な性格に変わってきた。

 「それでは、一度、試しに言葉を使わずに、コミュニケーションをとる訓練をやってみよう。」

 斎藤は、記憶の中に入るのに必要な能力が、コミュニケーション能力だと思っていた。それも、以心伝心のように、言葉を使わないコミュニケーションである。

 「でも、それはまだ難しい、ですよね。何しろ言葉を使うコミュニケーションすらまともにできないのですから。」清人は、そう言ってまだ自信がなさそうであったが、斎藤はお構いなしだった。

 「何を言ってるんだ。元々言葉をつかえない方が、この場合は有利なのかもしれない。下手に頭で考えずに、相手の目を見て、その動きを予測する。スポーツと同じだよ。

 本来なら、何かバスケットボールや、剣道とかそういう激しい動きのあるスポーツで教えるのが良いのだが、今の俺には無理なんだよな。

 それで、考えたのだが、城外開拓区警察署の道場で暫く、剣道を習ってみるのはどうだ?」

 斎藤の提案に、清人は一瞬驚き、目を丸くした。

 「そんなことが、可能なのですか?僕が警察署で剣道を習うなんて。」

 「まあ、清人君さえその気になってくれれば、あとは俺から署長に頼んでみるさ。どうする、やってみるか?」 

 清人は、不安な気持ちがまた過ったが、それでも勇気を振り絞り、自分が社会に出る第一歩だと考えた。
 
 「はい、斎藤さんありがとうございます。剣道を習ってみたいので宜しくお願いします。」

 と、清人にしては随分殊勝な挨拶をした。


 斎藤の頼みを聞いて、大和署長は 『何を考えているんだ、あいつは。』と一度は、断ろうとしたのだが。

 『しかし、これも無職で引きこもりの若者を社会復帰させるためだと思えば、警察署としても、良い宣伝になるかもしれない。』

 そう考え直して、快く許可してくれた。
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