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月の光 104

 新しくできた坂東地方管区では、乾と橋本が自治国家の設立を進めていた。そこでは、航空宇宙センターの派遣職員に対して、ある実験が行われていた。それは、ホタルの光によって成長した斎藤と、中西の脳をスキャンして、派遣職員にデータを移植するものだった。

 「派遣職員の活動はどうだろう。問題なく作業出来ていますか?」乾が橋本に尋ねた。

 「はい、彼らは、予定された作業を順調に消化しています。」

 「何か気になる点はありますか?」

 「今のところ、問題行動はないのですが、しかし、まだ被験者の数が少ないので何とも言えません。」

 「そうですね、まだ被験者は20名程度ですか。もう、半年もたつので、もっと対象人数を増やさなければなりませんね。」

 「問題は、そこなのです。今ある、斎藤と、中西の脳だけでは、データが偏ってしまいます。同じデータを持った、人間ばかりが複製されることになりますが、それで良いのか疑問があるのです。」

 橋本は、同じ遺伝子の脳を持った人間が増えても、あまり意味がないのではないかと考えていた。

 「ホタルの光によって彼らの脳は、初期化されていますから、経験値という意味では真っ新な状態ではあるのですが。そもそもの、遺伝子情報が限定されています。従って、遺伝的には偏った人間になるでしょうね。

 ですが、殆どの人間の遺伝子はそんなに差がないので、むしろ経験による差が大きいのではないかと、私は思っていますが。」

 一方、乾は経験の方が人間の脳を形成するうえで重要なのではないかと考えていた。

 「統計的に判断するには、最低でも被験者は1000名は欲しいのですが。ただその場合は、問題が発生した際にコントロールできなくなる可能性もあります。」

 「では、まず被験者を100名に増やしましょう。そして、その100名を、2グループに分けます。斎藤の脳と、中西の脳の2つのグループです。それで、同じ作業をやらせてみて、何らかの差異があるのか、検討しましょう。」

 「分かりました。それで、もしも差異が見られれば、遺伝的な偏りがあるのかもしれない、ということですね。」

 飛鳥研究所から派遣された職員は、脳のデータを移植し、全く差異の見られない人間を作り出すための実験対象とされていた。

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