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月の光 107

 西日本で起きた、大陸からの昆虫の侵入は、斎藤たちにはどこか遠い世界の話に感じられた。
 
 一方で航空宇宙センターの乾は、西日本での昆虫たちによる被害を知り、それに対する対応策を検討していた。

 被害は、作物や、人に対するものだけではなかった。アリは地下に侵入し、地下に張り巡らされた、光ファイバーを切断していった。バッタは地上に置かれた、電送施設の基地局やデータセンターに侵入し、それらを破壊した。

 そして、アリやバッタの周囲には、上空から蜂が飛び回り、復旧作業を困難にした。それらは、まるで統率のとれた軍隊のように、整然と侵攻しているように見えた。

 「橋本さん、丁度良い機会が訪れましたね。ホタルの光によって改良された職員を、西日本へ派遣しましょう。」

 「はい、本当に良い機会になりました。しかし、相手は昆虫のようですが、化学的に駆除する方法でよいのでしょうか。」

 「いえ、単なる昆虫ではないようです。情報によると狙われているのは、情報インフラ設備のようですから。恐らく、相手も改良された昆虫でしょう。」

 「そうすると、彼らも、我々のようにホタルの光を浴びたのでしょうか?」

 「何らかの、影響はあるのかも知れませんが、ホタルからの情報では、彼らは我々とは無関係のようです。むしろ、我々の目指す、人類改良計画とは、異なるものでしょう。ひょっとすると、彼らは人類の絶滅を目指しているのかも知れません。」

 「ホタルたちは、人類の絶滅に関与しているのでしょうか。ですが、我々には、人類を改良して攻撃性をなくすことで、人類の破滅を防ぐと指示されていますが。」

 「ええ、確かに我々はその様に指示を受けました。ですから、協力しているのです。しかし、我々の知るホタルとは異なるホタルがいるのかも知れません。吾妻教授のタブレットでは、神々の争いがあったと言います。」

 「もしもそのタブレットの通りだとすると、ホタルたちにも、敵と味方がいるということですか?」

 「ええ、そこなのです問題は。誰が、敵なのか、味方なのか。我々自身、ホタルの指示を信頼してはいますが、これが本当に人類の未来にとって良いことなのか。それは、まだ分かりません。

 ですが、私は、日本の未来のためには、外国の勢力を排除して生き残る道を探る必要があると思っています。その為には、日本人の改良が必要なのです。」

 「はい、その点については、私も乾さんと同意見です。外国との貿易、交流は良い面もありますが、結果として日本の秩序を乱してきました。その結果は、日本という有機的な共同体の破壊につながってしまいました。

 西日本における、昆虫の侵入も、私は外国との過剰な貿易、交流のせいではないかと思っています。」

 「今回、西日本での昆虫による情報インフラの破壊は、外国からの攻撃とも考えられます。ですから、侵入した昆虫ののサンプルを生きたままの状態で捕獲することが重要です。」

 「分かりました、西日本に派遣するメンバーには、昆虫のサンプルを生きたままで持ち帰るように指示します。」

 橋本は、坂東地方管区警察の本部長として、航空宇宙センターの改良された職員を率いて、西日本の昆虫を駆除するつもりだった。

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