fc2ブログ

月の光 110

 橋本は、田上局長の報告により、事態が予想以上に悪化していることを知った。

 「それでは、まずこの板付基地空港の通信網の復旧から始めましょう。」

 橋本の指示により、派遣職員たちは2つの部隊に分けられ、NGX4001からNGX4050までは地上階の復旧。そしてNGX4051からNGX4100までは、地下施設の復旧に取り掛かった。

 彼らの作業は一見して奇妙なものだった。何の工具も用意せずに、彼らは機械に素手で触れていた。そしてその手の指の先からは紫色の光のようなものがぼんやりと見えた。

 その様子を見ていた大島は、怪訝そうに橋本に尋ねた。「彼らは、一体何をしているのですか。見たところ、ただ機械設備の上を手で撫でているだけのように見えますが。」

 「ええ、彼らは触れることによって、機械内部の信号システムにアクセスしているのです。」

 「そんなことが、可能なのですか?」

 「はい、それが彼らの能力なのですよ。ご覧になったように、彼らの指の先から光が発せられています。あれが、信号となっているのですよ。」

 橋本の説明は、大島にとってはますます混乱をもたらすものだった。「彼らは、人間ですか?それともロボットなのですか?」

 「そのどちらでも、あります。強いて言えばサイボーグのようなものです。彼らは、改良されたヒューマノイドなのです。」橋本は、微笑しながら説明した。

 それは、大島には到底理解できないことだろうが、その理解は必要ないのだ、と言わんばかりだった。

 ヒューマノイドたちの作業は順調に進んだ。彼らの指先から発した光は、ファイバーケーブルを修復しながら進み、システム全体のケーブルを新たに生成していった。


 作業開始から数時間がたち、板付基地空港での復旧作業が完了に近づいたのは深夜2時を過ぎていた。その時、空港に新たに陸軍の車両が到着した。

 到着した車両から降りてきたのは、玄界灘原子力発電所の職員と、陸軍の兵士だった。通信回線が使えないため、夜を徹して走ってきたという。

 「一体何事だ?」田上局長は、駆け込んできた、陸軍兵士に尋ねた。

 「局長、緊急事態です。玄海灘原子力発電所の冷却装置が動作停止しました。」

 玄海灘原子力発電所は、既に廃炉が決定し現在は運転中止となていたが、まだ解体作業の途中であった。

 「玄海原子力発電所は既に、運転中止になっている。廃炉に向けて作業中だったのではないか?」

 「しかし、まだ解体が完了していませんので、核燃料棒の発熱が続いている為、冷却装置が必要だったのです。このままでは、冷却水が蒸発してしまいます。」

 冷却水が蒸発してしまえば、原子炉の核燃料は臨界に達する可能性があった。田上局長は予想外の事態に顔が青ざめた。

関連記事
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

gasset

Author:gasset
FC2ブログへようこそ!
歴史的事実に改編を加えた妄想小説です。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
カレンダー
02 | 2024/03 | 04
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR