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ロクサーヌ (その48)

 私kは、唐から来たという犯罪人2人を乗せて東北道を走っていた。仙台で既に夜になり、休むために高速道を降りた。松島に向かい旅館に泊まるつもりだったのだが、この2人には身分証明書がない。まともな旅館で予約なしに泊めてもらうことはできなかった。考えてみれば当然なのだが、そのようなことには思いが至らなかった。私もまた、この社会をただ浮遊しているだけで常識ある現実を生きてはいなかったのだ。やむなく、国道沿いを探して走りやっと一軒のラブホテルに泊まることができた。男3人で大きなベッドが一つだった。こうゆう場所にはいろいろな人が来るのだろう、特に事情を聴かれることもなかった。
 男たちは兄弟で兄はヒョンニ、弟はインチョルと名乗った。高句麗の出身だというが、髪は2人とも赤みがかった茶色で、弟の目は緑色、兄の目はグレーだった。チュルクとアーリヤの混血に思えた。話を聞いてみると、反乱が失敗に終わり、その後チュルクや胡人と呼ばれたアーリヤは厳しく排斥されたのだという。2人は高句麗遺民を名乗り難を逃れたのだが、今では本当の名前も覚えていないという。
 翌日は晴れていて、松島の海と島はとても美しく見えた。橋を渡って小島を歩き、また街に戻って瑞巌寺を見た。ここは、唐に留学して変えてきた円仁大師が開いた寺だという。そう言えば、あの恐山の霊場もやはり円仁大師の開いたものだという言い伝えがある。
 東京について私たちは錦糸町の私のアパートに帰った。6畳一間に男3人はとてもむさ苦しい。アパートの部屋でしばらくして落ち着くと、私にも現実が見えてきた。食費も必要だし、その為に仕事も必要となる。この2人をいつまでも遊ばせておくわけにもいかない。そうなるとこの者たちの仕事も探す必要がある。それよりももっと大事なことは、この者たちが密航者であるということだ。それをかくまっている私も犯罪者ということになる。
 そう思ってぼんやりと思案をしていると、ドアが大きくノックされ「kさん、いますか?派出所のものです。」と声がした。警察である。私が、2人に隠れるように言うより早く、すでに2人の姿はなかった。
ドアを開け「はい、私です。」と答えた。警察は、住民調査の巡回できたという。氏名や年齢を確認し、無職であると話すと、人のよさそうな警察官は「警察で働いたらどうだ。」と勧めてくれた。
だが、私には過去があり、また今現在も秘密を抱えてしまっている。丁重に断るしかないのである。
 警察官が帰って、しばらくすると、2人が戻ってきた。どうしたのか聞くと、窓から出て隣の部屋との間を伝って飛び降り、走って逃げたのだという。この犯罪人たちは、このような時には私などよりもずっと勘が働き上手に切り抜けることもできるのだと思った。一方で、私はまた罪を犯したのだとも思った。
 これから、私がしなければならないことはこの者たちを抱えて生活するために、まずは職を得ることだ。無職であることが警察に知られた以上ここはマークされるということだ。ここへ来た当初の目的とは、自分を見つめなおし、生活をやり直してみることだったが、思いもよらぬ形でそれは動き出しているのだ。
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