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ロクサーヌ (その71)

2140年8月2日(火)トーキョー
   私ロクサーヌは、今日は朝からラム・次郎と一緒に「トシマクの森」という公園に出かけた。
平和通りの近くにある公園で、中には小さな森と、トンボの池と、ロッジなどがあり、散歩するには丁度良い広さだ。しかし、受付には誰もいなくて、ロッジも閉鎖され、森の中の小道には蜘蛛の巣が沢山かかっていた。
 ロッジが閉鎖された理由は、不適切な利用があったためだという。
この公園は、壁の外側にあるため、移民エリアなのだが、適切な維持管理がなされなくなったのだ。
 ベンチに腰掛けてお弁当を食べている、ひげを長く伸ばした男性がいた。
ヨセフという人で、先祖はカスピ海にあったハザール帝国の貴族だったという。
 私は、懐かしくなってその人の話を聞いてみた
なぜ、懐かしいのかというと、ハザール帝国というのは、私たちソグド人がシルクロードを旅していた頃、カスピ海から西に商品を運んでいたのがハザールだったからだ。
 ハザールは当時イスラム教徒と、キリスト教徒が勢力争いする中で、あえてユダヤ教を選んだ国だ。それは同じ頃、東のウイグル帝国がマニ教を国教としたのと同様である。ハザール帝国で商売を担っていたのがユダヤ人で、ウイグル帝国で同じ役割を担ったのが、私たちソグド人だった。
 8世紀から10世紀にかけての話なのでずいぶん昔のことではあるが、なぜか親しみがわいたのだ。
 ヨセフによると、この公園を移民たちに任されたとき、それは義務ではなく権利だった。
しかし、権利には当然責任が伴うのだが、人々は、責任を負いたくなかったのである。
ただ、公園を使う権利だけは欲しがっていた。それで、壁の向こうの人たちは『自由にして良い』と言ったのである。結果、公園を清掃したり、見回って維持管理をしたり、不適切な利用を行う人を注意する、などの役割を果たす人がいなくなり、公園は荒れてしまったのだという。
 でも、この頃では、移民たちの間でも意見が分かれ、自分たちで自主的に清掃したり見回りしようとする動きが出てきているという。一方では、強制されるのは嫌だ、という人もいる。
義務というのは、それを成し遂げようという意識のある人にとっては、『責任』なのだが、それを行うつもりのない人にとっては、『強制』になってしまうものなのだろう。
ヨセフはその責任のことを先祖の伝統に従い『ノブレス・オブリージュ』と呼んでいた。

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