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ロクサーヌ (その72)

2140年8月3日(水)
ヨセフは見たところ、目が不自由そうであった。
「いやあ、貴族の責任だなんてカッコいいこと言いましたけど、実は私は目が不自由で、全く見えないわけではないんですけど、遊牧民としては致命的だったんです。
 馬に乗れないわけではないし、何とか長男としての責任も果たしたかったんですけど。もちろん手術をしたり、機械に頼れば見えるようには為ったんでしょうけど。
 どうにも自分が歯がゆくて、若い頃には自分が誰かの世話になるというのが許せなかったんです。
 それで、家を弟に譲って、旅に出たんです。
でもどこへ行っても結局、目が不自由なものだから、自分の思うようには行かなかったんです。
プライドだけは高かったんですけどね、現実はただの役立たずでした。
 それで、地球を西へぐるっと回って、ヨーロッパ、アメリカ、そしてこの日本に来たんです。
今は、もう48歳になります。
 でも、ここトシマクの平和通りにきて、よかったと思っています。
ここでは、例えば、私が目が見えないために転んだとしても誰も笑いませんからね。
みんな、自分自身の人生そのものが、滑ったり転んだりしてるんですから。
他人を笑えた義理じゃあないんです。
 この公園に住み着いて、配給されるお弁当を食べているうちに何か自分にも出来る事がないかな?と思えてきたんです。
そんな時にロービジョンの絵描きさんたちがいるって聞きましてね、絵を見せてもらったんです。とても奇麗でしたよ。透明水彩画っていうらしいんですけど。
目が悪いのに、絵を描いているんですよ!
 私には本当はよく見えなかったんですけどね。
その心を聞いただけで、美しいって思ったんです。でね、私も頑張って、この公園で少しずつ、清掃を始めたんです。見えないけど触ればわかりますから、出来ることをね、自分の役割を果たしていこうって思えたんですよ。ハッハッハ。今頃になって何言ってんだか、笑っちゃいますよね。」
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