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ロクサーヌ (その76)

2051年9月11日 錦糸町
 私kは、朝目が覚めると、改めて部屋の中を見渡した。やはり、ヒョンニもインチョルもいた形跡が無くなっている。テレビをつけると、ニューヨークで起きた、テロ事件の様子が繰り返し流されていた。ワールドトレードセンタービルへ、飛行機が突撃しビルが爆発して崩れていく様子だ。この日2001年9月11日の攻撃をきっかけに、世界は混乱の時代を迎えた。
 テレビは、この日の開戦50周年を記念した特集であった。
つまり、私は2051年の世界にいた。昨日、私は運命に勝ったと思っていた。何かを突破したと思っていた。それが何なのかは、分からないが、今私が過去から未来の別の世界に移動したのだろう。外へ出てみる。特に変わった様子は感じられない。錦糸町の駅へ向かって歩いてゆく。駅の手前の地下に『貿易風』という名の喫茶店がある。見覚えのある看板に惹かれ、中に入ってみた。
見覚えのある顔のマスターがいる。
「やあ、k君いらっしゃい。久しぶりだね」
「こんにちは。あの、僕のこと覚えているんですか?」
「もちろんだよ。君も、私のことを覚えていたんだね。」
「ええ、変わらないですね、ここは。」
「ああ、そうなんだよ。なぜか、ここは変わらない」
「マスターは年を取りませんね。でもどうして、飯田橋から錦糸町に移ったんですか?」
「街が、消えたんだよ。街が今どんどん消えているんだ。」
「街が消えた、のですか?マスターから見て僕は変わりましたか?」
「いや、君も変わらない、学生の頃のままに見える。
君から見ても、私はあの頃のままに見えるのか?」
「ええ、あの頃のままに見えます。どうしてなんでしょう?」
「私がここに来たのは、2023年だ。その頃から、世界が少しずつ消滅し始めたんだよ。
でも、私はなぜか年を取らずに初めはむしろ若返っていった。
私が特別なことをしたわけではない。毎日コーヒーを入れていただけだ。
でも、外の世界とは、時間の流れがずれていった。
この店の中だけが、特別なのか、世界が変わったのかはわからない。
しかし、この世界に異変が起きているのは確かだ。
そして、k君も私が見えるということは、君にも異変が起きているということだ。
私は、今時の狭間にいるのだと感じている。k君も、時の狭間にきてしまったんだよ。私は、毎日コーヒーを入れるということを繰り返している。
もし、それをやめたら、外の世界のように消滅するのではないかと、恐れているんだ。」
私には、マスターの言う時の狭間が何を意味しているのか分からなかった。
街が消滅して居る、ということの意味もまだ分からなかった。
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